事業開発見習い日記

東京でBDやってる人の日記

自信の拠り所

組織を率いる人間にとって、自信を身につけることは極めて大事だ。

自信のなさそうな態度は、部下の不安を煽るし、求心力を失う。正しいことを主張しても仕事相手には信用してもらえないし、何なら「自分より格下だ」と即断されてしまって、中身を聞いてもらえないことも多々ある。人の印象を決めるのは非言語情報が9割とかっていう研究結果があるそうだが、自信がなければいい印象を与えることは出来ない。

 

しかしながら、どう自信をつけていくか、というのは人によってずいぶんかわるらしい。自信のより所といってもいい。

(著しく自己認識がずれている人はおいておいて)、ふつう自信は過去の体験をより所として蓄えられていく。そして過去の体験には外的な経験と内的な経験の2つがある。

外的な経験は、かんたんにいえば他者からの評価で、昇進したという事実、他の人に褒めてもらった(表彰された)という事実、自分の持っている肩書、給料などである。「自分を認めてほしいという欲求(=承認欲求)が強い人ほど、これを軸に自信が形成されやすい。

一方、内的な経験は、「自分はこれができるようになった」「ここまで体得した」という自分の実感から形成されるものである。誰がなんと言おうが、偉い人がなんと言おうが「自分があっている(だって、あそこがXXXで◎◎◎だから▲▲だということはわかっている)」と主張できる。プロフェッショナルな気質の人ほどこちらの割合が強い。

 

そして、「この2つタイプの経験のうち、どっちで多く自信をつけてきたか」というのが、職種によってずいぶんパフォーマンスに影響すると思っていて、例えば、営業職の場合は、承認欲求が強い(=他者からの評価を求める)ほうがパフォーマンスがでやすい。そういう人は目標へのコミットメントの情熱は強く、最短経路で目標に到達しようと邁進する。

他方、エンジニアとか研究職はほぼ100%後者であって、今までやってきた実装やトライしたアイディアの多さ、バグに苦しめられた経験、難しすぎる理論の理解に苦しんだ経験など、自分の経験が自信の拠り所になっている。

 

事業開発の仕事はどういう割合の人がいいかと、2:8くらいのバランスが一番いいんじゃないかと思っている。

前者がほとんどの人は、向いてない。なぜなら、事業開発は会社がやったことがないことを検討するからだ。

常にトップは新領域の知見が乏しく、うまく目標を表現できないのが一般的なはずで、それに対してBD担当は、言われた目標を達成できそうな「プラン」だけを持っていくのではなく、「より適切な目標とそれに対する戦略筋、そして実行可能なプラン」のセットをまるごと持って行くことを求められている。(まるでお題を無視しているかのようだ)

 

他者からの評価だけで自信を形成してきた人は、間違った目標に突進してしまうか、もしくは全く目標を与えられていない状態に右往左往してしまって、何をしていいかわからなくなる。

後者だけでも困る。内的な経験による自信は、タコツボ化する可能性が高くて、自分の専門以外興味がない、となりがちだったり、他者の意見を気にしなさすぎたりする。

M&Aは会社と会社をくっつける作業であって、少なくとも様々なモチベーションと思考、インセンティブを持った人間がいることを想像でき、なぜその思いに至ったかを理解できなければならない。組織や人事に対して興味が無い人間だと、実行可能なプランを描けない。

 

なんで後者が8かというと、評価とかマネジメントとかがなくても正しく動かなければならないから。M&Aには一般的にわかりやすい定量指標がないし、達成基準の定義も難しい。買ったあと数年立ってやっと成功かどうかわかるようなものなので、人事評価自体が難しい。重要な事は、ディールの時に確実に正しい判断を下す状態を保つことが必要で、そのためには、評価にあまり興味のないような人が、議論と調査を尽くして深い理解が得ていく必要がある。

逆に、評価欲しさに戦略を描くとろくなことにならない。例えば評価者の仮説がまちがっているとその方向にみんな実現するよう動いてしまうし、未知の領域ではいかようにでも案件を正しそうに見せることができてしまい、モラルハザードを起こす。

 

トップから目標を与えられた時点で、本当にやりたいゴールの状態は何かを深堀りして聞き出し、もっと適切な目標を提示し返す、というところもBDのミッションに入っているとすると、人事評価を重視する人間だと少しむずかしいところがあるのかもしれない。

 

うーん、もう少しわかりやすい文章を書きたい・・