事業開発見習い日記

東京でBDやってる人の日記

BD(事業開発)の人は何で起業しないのか

ブログを見てくれている友人から「大企業のBDをやる人のモチベーションは何なのか」「なんで起業しないのか」と質問をもらった。

つまり、なんでサラリーマンなんかの薄給で、承認を取らなければならない人がたくさんいて、すごい面倒くさそうな仕事をやっているのか、ということである。うんうん、間違いない。

いくつか考えてみた。

 

スピードとテーマの数

大企業の事業開発のほうが数多くのことが出来る。

ベンチャーは一度やってしまったら、少なくとも数年から10年はコミットする。新しい市場だと、市場自体が立ち上がるのにも相当な時間がかかる。そして、もちろん取り組むのは1つの課題だ。

BDだと年間で数件行うこともできる(PMIがあるからどういう関わり方をするのかにもよるが)。

テーマも多岐にわたる。既存事業とのシナジーを生み出して、買収先と既存事業の双方を成長させられるか考え、グループ全体のエコシステムをつくり上げる、という作業だから、あんまり領域に境界はない。コンサルタントが「いろんな業界について学べるのが楽しい」というのとちょっと近いかもしれない。

 

解きたい問題とケイパビリティ

ベンチャーで成功するためには、自分が心から解きたいと思っている問題と、それを実現するのに必要なケイパビリティが必要だ。下記にもあるが、これは真実だ。実際に実現できるという証明は非常に重要で、それは強いバックグラウンドだったり、プロトタイプを制作することだったりする。

素晴らしいアイディアの持ち主で、それを素晴らしい事業計画に落とし込めるというだけの起業家は消えて行く。この種の起業家は、それがEvan Williamsのように既にエグジット経験がある人材でない限り、もう見向きもされないと断言。 

Uberなど60社に出資するエンジェル投資家が定義する各種資金調達ラウンドと、ファウンダーがすべきこと - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

だから、BD担当から起業する場合は、ほぼ役割上CEOしかできないし、非常に強力なチームを構成出来ることが必須条件になる。

加えて、強い問題意識が必要だ。まあここについては、普段からたくさんの企業に会うから、やりたい領域も見つかるのかもしれない。

 

サービス開発としての買収

大規模投資を含むようなBDをするインターネット企業のといったらもう、海外を合わせても100社はないくらいの規模かもしれないが、そういう会社でしかできないこともある。"Change the world"をするのに、ベンチャーだけで突破する場合もあれば、大企業が主体になって変えていくときもある。

下記のGoogleの買収リストの内、統合された先を見てほしい。("Used as or integrated with")

List of mergers and acquisitions by Google - Wikipedia, the free encyclopedia

ほとんどのサービスがスタンドアローンで残るのではなく、統合されている。こういう買収は、新規領域に進出とかっていうのではなく、より良い自社サービスを提供するためのプロダクトの強化であり、チームの強化であって、サービス開発の一環といえる。

ベンチャーの場合は、そこまでのアセットはない。組むか買えるくらい大きくなるかしかないのである。

純粋に「世の中に新しいサービスを提供する」という観点から見ると、起業も買収も手段でしかない。(他にいろんな観点があるから実際にはそれだけではないけれど)

 

報酬について

これについては、もはや慣れてしまっていて、インターネット業界でBDをしているとだいたい「Co-founder & CXO」に会う。有望な会社の多くは、過去に創業者が何社か既にやっていたことのある人物で、目の飛び出るような資産を持っていることが多い。

だから「誰と会っても自分より金持ちで、しかもケタがだいぶ違う」という状況が永遠に続くし、やっぱりけっこう悲しい気分になる。 

でも報酬を理由にやめるなら、たぶん既にやめている。やめない人にとっては逆に報酬は決定的な要因にはならない。

 

ロイヤリティ

それでも辞めない人は何なのかということをいうと、やっぱり「この会社にいることを決めた人」という回答が正確に表していると思う。

普通それって、経済的に安泰だから居続けるとか、もう歳だから居座るっていうネガティブな響きがあるけど、BDに携わる人はたいてい出世コースにいるような幹部職が多い、というのが普通なので、純粋にこの会社にいたいからいる、のほうが近い。

(うちの会社みたいに、職位もないし経験も少ない人間が関わっている事自体が珍しいし、他社じゃあんまり見たことない)

普通にBDをしてきた人なら、「この会社を今後どうしていくか」っていう経営側の思考になっている人が多いはずだから、少なくともBD担当が辞めるといったら、相当の理由が裏にある。ポジティブな理由がほとんどだろうが、そうでなかった場合には、何かを重大な問題があるに違いない。

 

こんな感じ。